仏 道

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釈迦尊(ブッダ)が到達された至高の真理(実現.事実.現実.実相)は、ナーガルジュナ(龍樹.マハーヤーナ)やブッダゴーサ(上座部.ヒーナヤーナ)を乗り越えた処に、顕現する。

 
仏道とは自己を習うことなり、
自己を習うとは自分を冷徹厳峻に見つめ、分析し、思惟し、気付き、自覚し、理解する事である。
道元禅師がいう自己を忘れるとは、私という自我意識とそれに発する感覚的妄想を脱落させる事であり、自我と妄想を断滅し自由な水の一滴とならん。
 
「人の心のその奥に仏も住むが鬼も住む」
理解しているようで理解できていないのが自分であり、制御しているようで感覚や煩悩に支配されているのに気付けず自分の心だと錯覚していたり.主人の意志に反して.従業員が勝手に振る舞っているような人もよく居るもの。
 
心の中を主観を差し挟まず客観的に眺めると.そこには整合性もない色々な自分が見出せる筈であり.どうでもいい物事.つまらない物事.下らない物事に捉われ.拘り.執着してしまい制御できない未熟な自分を見い出したり.自分を騙し誑かそうと走り逃げ回る気紛れで捉え処のない自分が居たり.素直な自分や我がままな自分が居たり.前向きで誇れる自分も居るだろう。(それらの中には人の身と生まれるまで輪廻してきた多くの生命の心の残滓も含まれるのである。)
 
仏教を勝利の書として機能させるには.自分という存在をダークサイドを含めて冷静に認識し自覚してゆくからであり、「敵を知り己を知れば、百戦して百勝危うからず」と孫子の兵法でも言うように、血生臭い殺戮を伴うような争いでなくとも.人生とは自分との戦いであり.社会や他人との戦いであり、無明や性(さが)との戦いであり、戦いの放棄も又.一つの戦いであり、己を知る事は.あらゆる勝利への入り道なのである。

[一句の実践]と言うように.経典は良い事があるように唱えるためのものでも拝むためのものでもなく.実践するためのものであり.一切の経典は解答への方向性を指し示す参考書の類に過ぎず、経典の中に決して解答を見い出す事など出来ないもの。何かしらの経典の偈を以って.ああだこうだと喧しく自説に自惚れてしまい自分を幾分も浄めようと実践に努め励む事のない学者外れの頭でっかちな観念論者や信仰.信心に安らぎを求め.自分の精進をなおざりにしてしまう虚妄愛好家ばかりが増殖しているが、十人十色と言われるように多様性によって立つ世界において.仏教経典とは.言わば人が十人居れば十種の経典が必要となり.人が万人居れば万種の経典が必要ともなる.皆一様に諭せる文字.言語による経典など存在し得ないのであり、それを充分に認識なされて居られたお釈迦様は説法はその人のレベルと状態に合わせて対機説法を以ってなされ、至宝の遺訓により全ての人々に.無記のニ巻一対の最上経典[自燈明経典]と[法燈明経典]を遺されたのであり、自燈明を紐解けば[真理は.自分の中に全て具されているから心の中をよく眺め.分析し.熟考し.発見し.検証し.理解する事であり決して他人を頼りとして間違ったり偏ったりしたものに染められるな」という教えであり、法燈明を紐解けば法(仏法.天地自然法則.物理法則)を燈明として眺め.分析し.熟考し.検証してゆくと三法印(無常法則.無自我法則.皆苦法則)に行きつき、因果律に従って縁起(相互依存関係性)している空性な現象に過ぎない実相を心が悟るのである。
心に注意を向ければ苦悩(ドゥッカ)の本当の原因も見えてくる。
厄介な事に人は感覚を放置せず、感覚に概念や価値判断.感情をすぐさま加える、そこには自我.主観による[私]の計らった.比較.善悪.好嫌.愛憎…という偏った見解に縛られる。
「例え、為になる事を数多く語るにしても.それを実践しないならば.それは怠った愚か者に過ぎないのである。牛飼いが他人の牛を数えているようなもので幾ら数えていても自分のものにはならない。彼れは修養する人の部類には入らない。」
存在であれ.非存在であれ.物事であれ.縁起のシステムであれ.思考であれ意識であれ.ドゥッカ(苦.不安定さ.無常さ…)であれ.業(カルマ.形成力)であれ.連鎖継続の輪であれ.渇望によりし叡智により消滅する生起する性質のものは消滅する性質のものであり
生起の芽も消滅の芽も五集合要素(五蘊)の内に含まれている、つまりは.この身の丈の内に.世界および世界の生滅.世界の生滅に至る道.浄不浄.幸不幸.ドゥッカ(苦.心痛.迷い.不安定さ…)の生滅の全ての要素も.顕現する堅固な涅槃(ニルバーナ).直感智.透察などの要素も在るのであり、それら全ての生起と消滅を司る外的な力など実際は存在しないのである。
「清まるも.汚れるも各自の事柄である。」
自分という存在を法を道標に.理性的にそして客観的に冷徹厳峻に眺め.見つめ.観察し.分析し.思惟し.思推し.思考し.気付き.自覚し.検証し.理解し.目覚め覚醒し.乗り越え超越し.解き放たれ解放され、無明を捨て去りて離れて、堅固な幸せという真の勝利を獲得する理法が仏の教え(仏教)なのです。