思考は苦を捏造する

無明(本質的無知)の闇の中を.盲目的に.手探りで暗夜行路を歩くが如き[思考]は、先入観.思い込み.錯覚.感覚.感情.欲望.既成概念.通説.伝聞.自己暗示.染脳(洗脳).自我意識などにより、在りもしない苦(ドゥッカ)を.自ら捏造している…
因みに、世の中で言う[無思考]とは、ゴチャゴチャと雑念や妄想に気を取られ、考えるべき事を考えていないような人をいうのであり、寧ろ無思考で居られる人とは、心が制御.統制され.感覚に虚を付かれず.無駄な事.つまらない事.下らない事.どうでもいい事に.あれこれと捉われず、拘らず、気を取られない人を言うのです…
■精神作用の定義と認識
【認知.認識.意識.思考】
【認知】 ある事柄を「知っている状態」
識別していない状態
【認識】 ある事柄を「識別している状態」
分別や判断を加えない状態
【意識】 ある事柄に[感覚的.感情的な認識が加わった状態]
分別や判断を加えた状態

【思考】 
五集合要素(五蘊)により形成させた意識を.表層の脳域に於いて.その意識を言語化して経験.記憶.知識などを動員して主観や見解を導き出す。
★五  蘊 (五集合要素)
 
【色 蘊】(ルーパ)色かたち、「私」を分析すると、色かたちが見つかる。名称と形態

☆ 体とは常に変化生滅してゆき「私」という実体はない 
 
【受 蘊】(ヴェ-ダナー) 感受作用 

五官(眼鼻耳舌身)を観察すると苦と痛みが見つかる
 
☆ 負担に感じる量の痛み・苦が消える事が、楽である。
 
【想 蘊】(サンニャ) 認識作用 想念

五官により得た情報を確認・再確認・妄想している。
 
☆「花だ」「猫だ」「私は医者だ」「あれは何だ?」 
 
【行 蘊】(サンカーラ) 意志作用 

何かをしたい・何かしなくてはという気持ちがある。
 
☆サンカーラ 前の状態から次の「何かしたい」という力が変化しながら流れてゆく。
 
【識 蘊】(ヴィンニャーナ)(心) 

識別作用、意識
 
 頭が知る事ではなく心が識ること。

☆命・生きている認識・心のはたらき
 
◎区別判断するための情報や価値基準を想蘊をつかって識蘊が識別.判断している。

☆心(ヴィンニャーナ)が働く為に、受(ヴェ-ダナー)と想(サンニャー)が必要で、そこには必ず行(サンカーラ)が働く

■思考域(脳域)

★五集合要素(五蘊)で形成された意識が.上層(脳域)において言語として思考化され、知識.経験.記憶.情報などを加えて一定の見解や主観を形成させている。

♠もし自我意識(エゴ)が強まった思考をしていると、自己中心的.自分勝手.自分の都合に沿った根拠(客観性)に乏しい見解や主観を、正し見解、間違ってない主観と錯覚し、その現実とのギャップにより苦(ドゥッカ)を造り出す事となる…苦と不満と怒りの中をいきてゆく

♠もし六根(眼耳鼻舌身意)に対する刺激(外部刺激.内部刺激.精神的刺激.神経的刺激)の量が増え.負担と感じた瞬間(認知した瞬間)に唯、その認知した負担量を減らせば良いだけ.なのに、好きだ嫌いだ、良いだ悪いだ、苦しいだ快いだと負担が消えた後も思考はあれこれ雑念や妄想をしている…在りもしない刺激に刺激され.苦しんだり.悩んだり.怒ったり.怖れたりさせるのも思考なのである。

 

[菜根譚]

風来疎竹、風過而竹不留声。
雁度寒潭、雁去而潭不留影。
風、疎竹(そちく)に来たる、風過ぎて竹に声を留めず…

雁、寒潭(かんたん)に度る、雁去りて潭(ふち)に影を留めず。

 

☆人類はの一番の宝と言える.その発達した思考力は両刃の刃でもあり、その高度な思考力により社会を進歩させ.発展させ.科学を発達させて来た一方で.その思考力により妄想的な苦(ドゥッカ)を造り出してもいるのです…

現代人は尚更に.社会に溢れ返る.偏ったり、間違っていたり、作為的.染脳的(洗脳的)な知識.情報.主観的見解. 妄想的見解.観念.空論.戯れ言.能書き.美辞麗句などに翻弄され、無駄なもの事や.どうでもいいもの事や.つまらないもの事や.下らないもの事まで、ゴチャゴチャと考えずには居られず、大切な生命エネルギーさえ大きく浪費させてしまって居るのです…多くの人達の一日の思考の内の.凡そ99%は無駄な思考をしていると言え、考えるべき事を.考えるべき時に考える為には、無駄な思考を減らす訓練が必要なのです…

♥物事を全体性を分断して識別.分別.思考を加えず、唯、認知して唯、眺める訓練により、全体性を把握して、妄想的思考、自我意識、感覚的.感情的.分別.識別は脱落してゆき、真理(真実.事実.現実.実相)が自ずと顕現してくる…

■安寧の呼吸法
昨今の上座部ではマハリシの影響を受け、ラベリングによる集中を行ないますが、これは頂けない愚法だといえ、ラベリング行為や息数法などは集中力を高める為に思考力をフルに活用する事に他ならず、ゴチャゴチャとした思考の内に神仏が現れたり、超感覚が発現したりと妄想や錯覚や勘違いに入って行き易く、
そうした倒錯した落伍者の多くが.カルトや得体の知れない新興宗教を広めてゆくのです…
[思考を止める][集中力を高める][心を平安に導く]ためには、ただ呼吸を追い.ただ呼吸を眺め…思考を加えない訓練が必要であり、自ずと深淵なる安寧の呼吸へと入って行きます…

そして、思考を止めるべき時(止観)には、思考を止め…考えるべき時(観行)には集中して思考して、物事を真に理解してゆくのです…
☆呼吸法の基本
浅ければ浅いなりにゆったりと呼吸し、深ければ深いなりにゆったりと呼吸するのがコツです…
自律神経を弛緩(眠りの方向)させてゆく為には、吸気よりも呼気を少しでも長くもっていきます…
自律神経を覚醒(目覚めの方向)させてゆく為には、呼気よりも吸気を少しでも長くもっていきます…

思考.雑念.妄想を始めたら、気付き止める事(一に止まる→正法)
■つまらない者事.下らない者事.どうでもいい者事に捉われなくなって初めて、安寧は訪れる…