欲望と怒り

欲望と怒り
欲望と怒りとは表裏一体のものだと明確に認識しなければ、常なく変化生滅しながら.移ろいゆく諸行無常なこの世界では.そうそう自分の都合通りに物事は運ばないものであり、一瞬一瞬に生じている欲望により不満や怒りを積み上げて行く事となる…
欲望の裏側には常に怒りや不満が潜んでいるのですから、欲望が強ければ強いほど、また欲望が深けれは深いほど、裏では怒りや不満が繁殖しているのです。
通常は冷静沈着で大人しい人と思われてるような人が突然に切れたり.暴れたり.事件を起こしたりするのは、普段は理性の箍(たが)が掛かっていても.潜在煩悩には怒りや不満が積み上がっていて、それを何かしらの縁が目覚めさせた時に現れただけであり、特別に不思議な事ではなく.思議しづらいだけの.積み上がった怒りや不満の出現なのですから…
欲望的な社会には、そんな鬱積された怒りと不満が満ち満ちているのです。
生活の中で、実践的に修養してゆく事により、誤った認識を正しい観念(正念)へと改め、煩悩(存在欲.自我意識)の苦しみを.とこしえの歓びと平安に変えてゆくことができるのです。
諸行無常   
[全ての物事は常なく変化しつづけるもの]
諸法無我
[それは因果律(縁起)に従った関係性の中での出来事であり固定的な実体ではない]
涅槃寂静
[この事実に従って物事も.心も受け止めれば分別や好嫌や執着などによって波立つ心も静かな安らぎを得られる]
正観すれば厭離の心が生じ…
厭離すれば執着.愛着.貪欲の心が滅し…
心は解放され堅固なる安寧を得る
[平安に勝る悦楽なく慈悲に勝る功徳なし]
自己啓発
世間と言うものは真実を素直に認める性格は持ってないもので、伝統的な物事.思い込み.権威.格調.迷信.先入観.既成概念.固定観念...などが優先的に信頼され、人々に事実を理解させる事はひどく骨の折れる作業を伴うもので、ひとつ間違うと不穏分子扱いされかねない処もあり、自己啓発というものも.真理(真実.事実.現実.実相)に基づかない感覚的.感情的.主観的.観念的な空論を以って行ずる啓発は一種の洗脳(染脳)でしかなく、決して鵜呑みにしてはならず.よく眺め.吟味し.分析し.思惟し.検証し.確証を得られなけば正しく自己啓発してゆくことは難しい…
仏教の目的は、自らの努力.精進.意志.信念に根差した自己啓発.自己克己などによる苦からの解放を目指すのであり、知識でも.情報でも.記憶力でも.作法でも.習得でもなく.その為には[人間性の成長]が欠かせない要素なのです。
そこには大きな乗物も小さな乗物もなく自身の人間性の成長.抜きには仏教は成立し得ないのです…
しかし世の中(便利さに慣れた現代人は尚更)は、自分の人生なのに他人の考えに依存したり、得体のしれない神仏など他力に依存したり、妄想的.単なる形而上の観念.仮説.空論に依存したり、眉唾で怪しげな超越的な力に依存したりして、却って苦や不満(ドゥッカ)を深めているのです。
それらは病み苦悩する心に安らぎを与える鎮痛剤.緊急処置としては有効ではあるが、それらは病巣を取り除き.快癒させる根治治療では決してなく、真に心を完成させ堅固な幸せへと導くものは、唯一.堅固で安定的で無為なる真理(真実.現実.事実.実相)を依り処(精神的支柱)とした自己啓発.自己研鑽.自己克己に他ならない。
[真の依り処は.真理のみ…
自己の依り処は.真理を観ずる自己のみ..
他に如何なる依り処があろうか…
自己のよく調御せられたる時…
人は得がたき堅固なる依り処を得る…]
[仮の姿を.真実だと思い込んだり…
間違ったり偏った観念を抱いていると…
真理へは到達できない…
真実ではないものを.真実であると見做している人は、真実を.真実ではないと見做してしまう…
それによって真実へは到達できない…
[真理は真理…虚仮は虚仮]
他力を当てにして.ご利益を当てにして.ご加護を当てにして.幾ら祈れども.幾ら崇め拝めども.幾ら唱えども.幾ら諂えども.待ちぼうけ…待ちぼうけ…
 待ちぼうけ  北原白秋
1.待ちぼうけ、待ちぼうけ
 ある日せっせと、野良稼ぎ
 そこに兔がとんで出て
 ころりころげた 木の根っこ
2.待ちぼうけ、待ちぼうけ
 しめた。これから寝て待とうか
 待てば獲物が驅けてくる
 兔ぶつかれ、木のねっこ
3.待ちぼうけ、待ちぼうけ
 昨日鍬取り、畑仕事
 今日は頬づゑ、日向ぼこ
 うまい切り株、木のねっこ
4.待ちぼうけ、待ちぼうけ
 今日は今日はで待ちぼうけ
 明日は明日はで森のそと
 兔待ち待ち、木のねっこ
5.待ちぼうけ、待ちぼうけ
 もとは涼しい黍畑
 今は荒野の箒草(はうきぐさ)
 寒い北風木のねっこ